旅路 | long island sound

旅路

明日上智での授業が始まる。先週遥々海を越え、色んな国々から寮にやってきた留学生は皆緊張しているんだろうなと思いきや、娯楽室を覗いてみれば皆映画を見ている。俺の部屋はすぐそばだから、これを書きながら頻繁に爆笑が聞こえる。


今年の留学生は皆いい人だな。娯楽室なんて、前は殆ど使われなかったのに、今は毎日のようにお酒と人で溢れていて、結構盛り上がる。或る日、食堂で黙々と夕飯を食べていたところを、一人の留学生が同じテーブルに座って話しかけてくれた。すっかり感心してしまった。それってそんなに凄いのかと思われるかもしれないが、正に前例のないことだと理解していただきたい。これで何ヶ月もこの寮に住んでいるのに、食堂で話し声を聞いたのは僅かの数回しかないのだ。新しく入った留学生はそんなことを知る術がなかろうが、こんなに易々と話しかけることができる人はやはり凄い。もっと早く来てくれたらよかったのに。


日本に来たばかりの人と話していると不思議な気持ちになる。皆これからの留学を楽しみにしているのに、俺はここにいることが何よりも嫌いだ。ガス栓を抜いて冷蔵庫の電源を切る為に生きているだけだ。新しく来た人は上野だの原宿だの、毎日色々な所に行くのに、俺は電車に乗ると行き先は大体決まっている。新しい所に行かないし、行きたいと思わない。これからの勉強に励むことが楽しみらしくて、普通の会話で日本語を使おうとする人もいる。それに対して俺は…云々。


最近は日本の大学に入れなかったらこれからはどうするか、よく考えている。とても大きな可能性だから、やはり考えざるを得まい。